初戦でスウェーデンに1-5と歴史的大敗を喫したチュニジアが、翌日に監督を電撃解任——そして名将エルベ・ルナールを緊急招聘した。2022年カタールW杯でサウジアラビアを率いて優勝候補アルゼンチンを撃破、アフリカ王者を2か国で制した知将が、わずか数日でボロボロのチュニジアをどこまで立て直せるか。
一方、オランダと2-2で引き分けた日本は勝ち点1。6月21日(日)13:00、メキシコ・モンテレイで迎えるチュニジア戦は絶対に落とせない。久保建英の欠場確定、遠藤航の離脱——2つの痛手を抱えながら「それでも勝つ」答えを出す試合だ。
チュニジアに何が起きたのか:歴史的大敗と緊急監督交代
チュニジアはアフリカ予選を10試合無失点で突破した堅守が自慢のチームだった。ところがW杯本番では様相が一変した。直前のベルギーとの親善試合で0-5の大敗、そしてグループ初戦のスウェーデン戦で1-5の惨敗——これはW杯史上チュニジア最大の黒星であり、ペナルティエリア外からのシュートだけで3失点という1966年以降のW杯で44年ぶりとなる屈辱的な記録だ。
守備の要として期待されたセンターバックのモンタサル・タルビとオマル・レキクのコンビは「消極的で動きが鈍かった」と現地メディアに酷評された。スウェーデンのミドルシュートを前に、チュニジアの守備は完全に崩壊した。
この惨状を受け、チュニジアサッカー協会が白羽の矢を立てたのがエルベ・ルナール——「白シャツの魔術師」の異名を持つ名将だ。2012年にザンビア、2015年にコートジボワールとアフリカネイションズカップを異なる2か国で制覇。2022年カタールW杯ではサウジアラビアを率い、優勝候補アルゼンチンを2-1で撃破する歴史的大金星を演出した。ハーフタイムに「君たちはただメッシと写真を撮りに来ただけか」と選手を叱咤し逆転を生み出したエピソードは今も語り草で、アフリカ大陸最優秀監督に3度輝いた実績を持つ。
ルナール新監督が変えること:4バックとコンパクト守備
前任のラムシ監督が採用した3-5-2をルナール監督はあまり好まない。現地メディアの分析では、新体制では4-3-3または4-3-1-2への移行が予想されている。戦術の基本方針は「コンパクトで深い守備ブロックの形成」——ルナール流の手堅い組織守備で、まずは二度目の大量失点だけは避けることが最優先だ。
スタメンも大幅に刷新される。GKはアイメン・ダーメンの先発復帰が有力視されており、センターバックにはアデム・アルスやディラン・ブロンの起用が検討されている。中盤では精彩を欠いたラニ・ケディラに代わり、モハメド・ベルハジ・マフムドが先発に入る見込みだ。
ルナール監督 就任会見コメント
「重要なのは選手の名前ではなく、攻撃力・爆発力・賢明な動きだ」
引いて守りながら少ないチャンスから1点をもぎ取る——チュニジアが日本戦に持ち込みたい展開はそこにある。
チュニジア最大の脅威:ハンニバル・メイブリを止められるか
チュニジアの攻撃の全てを司るのが、背番号10のMFハンニバル・メイブリ(バーンリーFC)だ。「カルタゴの雷光」と称される司令塔は、しなやかな身のこなしで守備を外し、絶妙な間合いから決定的なスルーパスを繰り出してくる。
ハンニバル・メイブリ データ(90分換算)
| スタッツ | 数値 |
|---|---|
| 正確なパス数 | 37.0本 |
| チャンスメイク | 3回 |
| ドリブル成功 | 2.0回 |
| タックル | 5.0回 |
| ボールリカバリー | 4.0回 |
チュニジアが偽9番(セバスチャン・トゥネクティ)を起用してきた場合、ハンニバルが中盤で自由に動けるスペースはさらに広がる。日本の中盤がハンニバルにリズムを作らせた瞬間、カウンターの起点になる——そこが最大の警戒ポイントだ。
日本の勝ち筋:44年ぶりの弱点を突け
チュニジアの致命的な弱点
ペナルティエリア外からのシュートで3失点
1966年以降のW杯で44年ぶりとなる屈辱的な記録
ルナール監督がいくら守備を整備するといっても、数日間での修正には限界がある。日本がチュニジア守備ブロックを崩すための有効な一手は、積極的なミドルシュートによる揺さぶりだ。
過去の対戦成績が示すもの:日本は5勝1敗
「チュニジアは苦手」というイメージを持つ人もいるかもしれないが、データは正反対だ。過去6回の対戦で日本は5勝1敗、得点8・失点3と大きく勝ち越している。
日本vsチュニジア 過去の対戦成績(通算5勝0分1敗)
| 日付 | 大会 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1996/10/13 | プーマカップサッカー’96 | 日本 1-0 チュニジア | 初の対戦で白星 |
| 2002/06/14 | W杯日韓大会(大阪) | 日本 2-0 チュニジア | 中田英寿らのゴール。日本史上初のW杯決勝T進出を決めた歴史的一戦 |
| 2003/10/08 | 国際親善試合 | 日本 1-0 チュニジア | |
| 2015/03/27 | キリンチャレンジカップ2015 | 日本 2-0 チュニジア | |
| 2022/06/14 | キリンカップサッカー2022 | 日本 0-3 チュニジア | 唯一の黒星。完敗を喫した記憶が残る |
| 2023/10/17 | キリンチャレンジカップ2023 | 日本 2-0 チュニジア | 直近の対戦。2点差で快勝 |
特に印象深いのは2002年の日韓W杯だ。大阪の長居スタジアムで、中田英寿らのゴールでチュニジアを2-0で下し、日本がW杯で初めて決勝トーナメントへ進んだ舞台だった。あの熱狂からちょうど24年——今度は北中米の地で、再び日本がチュニジアを踏み台にして上へ行く番だ。
一方、唯一の黒星は2022年のキリンカップ(0-3)。国内開催でありながら完敗した苦い記憶も残る。チュニジアが決して侮れない相手であることは、この一敗が証明している。だからこそ、初戦で大敗して追い詰められたチュニジアが「死に物狂いで向かってくる」という前提で戦わなければならない。
久保建英、欠場確定——何が起きたのか
大会前から続く試練が、ここにきて日本代表を直撃した。エースの久保建英が負傷によりチュニジア戦の欠場が確定したのだ。W杯直前から怪我を抱えながらプレーを続けてきたが、初戦のオランダ戦も出場できず、そのまま回復が間に合わなかった。
久保は今大会の日本にとって攻撃の起点そのものだった。狭いスペースでボールを引き出し、ドリブルで局面を打開し、決定的なラストパスを供給する——その仕事を誰が代わりにやるか。チュニジア戦はその答えを出す場でもある。
加えて、大会前には遠藤航もキャプテンのまま負傷離脱という誤算もあった。2つの痛手を抱えながら、日本代表は「それでも勝つ」ことを証明しなければならない。
長友佑都(DF)コメント
「決勝トーナメントで帰ってこれるでしょ。たけなら。それを信じて。たけのためにも、もう絶対勝ち上がんなきゃいけない。彼もやっぱり引っ張ってきた人間、日本に絶対的に必要な選手。決勝トーナメントで彼は帰ってくる。しっかりと繋げます」
久保不在でも戦える:堂安律という答え
日本代表は大会前に遠藤航がキャプテンのまま離脱。さらに久保建英も負傷でチュニジア戦の欠場が決定した。しかし「久保がいなければ終わり」ではない。
堂安律(MF)コメント
「ネガティブには言いたくないですけど、こういう事態が起きるのもW杯の1つだと思っています。ただ、幸いタケは離脱せずに、チームと(復帰の)可能性を探りながら一緒に戦える。僕たちが、彼のためにステージを用意できる」
「(中村)敬斗も僕も(伊東)純也くんも、(鎌田)大地くん、(塩貝)健人もできるし、ツートップで(小川)航基もいる。いろんなオプションがある中で『人がいない』というネガティブさは全くない。ただ、タケのアイデアみたいなとこがひとつ欠ける痛さは感じますけど、逆に言うとプラスにタケにはないスピードなどは、他の選手が補える。痛いのはもちろん痛いですけど、考えすぎず試合に臨みたい」
最有力の代役は堂安律だ。オランダ戦では右ウイングバックを務めた堂安だが、右シャドーにスライドすることでよりゴールに近いポジションから左足のミドルシュートを狙える。そして現在はキャプテンマークも巻く——戦術的な代役以上の「精神的支柱」としての役割も担う。
右ウイングバックには菅原由勢が入り、右サイドからの仕掛けがもう一つの鍵となる。伊東純也・前田大然といった切り札をいつ投入するか——そこも森保監督の腕の見せどころだ。
予想スタメン
綺世
©
大然
大地
海舟
由勢
敬斗
彰悟
洋輝
彩艶
クティ
バル★
★=最警戒選手 ©=キャプテン オレンジ=GK チュニジアは予想スタメン
日本代表(3-4-2-1)
| ポジション | 選手名 |
|---|---|
| GK | 鈴木彩艶 |
| CB | 渡辺剛 谷口彰悟 伊藤洋輝 |
| WB | 菅原由勢(右) 中村敬斗(左) |
| MF | 佐野海舟 鎌田大地 |
| シャドー | 堂安律(右) 前田大然(左) |
| FW | 上田綺世 |
チュニジア代表(予想:4-3-3)
| ポジション | 選手名 |
|---|---|
| GK | アイメン・ダーメン |
| DF | アデム・アルス モンタサル・タルビ ディラン・ブロン アリ・アブディ |
| MF | エリース・スキリ ハンニバル・メイブリ ベルハジ・マフムド |
| FW | エリアス・アシュリ セバスチャン・トゥネクティ イスマエル・ガルビ |
※ルナール監督就任後のスタメンは流動的。現地メディアの予想をもとにした構成。
試合会場・コンディション
試合会場はメキシコのエスタディオ・モンテレイ。日本代表は現地の気候を想定してモンテレイで事前キャンプを実施し、暑熱対策を徹底して臨む。
過酷な環境下での試合となるため、終盤のスタミナ管理と交代カードのタイミングが例年以上に重要になる。久保・遠藤という二枚看板が不在の中で90分間強度を保てるか——ベンチワークが結果を左右する一戦でもある。
グループF現在の順位
| 順位 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 敗 | 得 | 失 | 差 | 勝点 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | スウェーデン | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 | 1 | +4 | 3 |
| 2 | 日本 | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 | 2 | 0 | 1 |
| 2 | オランダ | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 | 2 | 0 | 1 |
| 4 | チュニジア | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 5 | -4 | 0 |
試合展望
初戦で壊滅的な大敗を喫し、指揮官も代わったチュニジアは、間違いなく崖っぷちで向かってくる相手だ。ルナール監督という名将の存在が、わずか数日でどこまでチームを変えるか——これが最大の不確定要素となる。
それでも、日本には有利な材料が揃っている。チュニジアの守備の脆さ(特にペナ外からのシュート)、歴史的な対戦成績のアドバンテージ、そして豊富な交代の切り札。森保監督が正しいタイミングで正しいカードを切れれば、この試合は取れる。
この試合、引き分けは負けに等しい。ミドルシュートでチュニジアの守備を壊し、ハンニバルを封じて3点持ち帰る——それが日本に課せられた使命だ。
まとめ:チュニジア戦、日本が勝つための3条件
- 条件①:ミドルシュートでチュニジアの急所を突く
初戦でスウェーデンに1-5大敗し、ペナ外からのシュートで3失点という44年ぶりの屈辱的な記録を残したチュニジア。この弱点を堂安律らの左足ミドルで積極的に狙い続けることが最優先だ。 - 条件②:暑熱のモンテレイで交代カードを的確に使う
メキシコ・モンテレイの過酷な環境下、日本代表は事前に暑熱対策キャンプを実施済み。ルナール流の引いた守備をこじ開けるには、伊東純也・前田大然らベンチの切り札を正しいタイミングで投入する森保監督のベンチワークが鍵になる。 - 条件③:中盤でハンニバルを封じ、カウンターの芽を摘む
「カルタゴの雷光」ハンニバル・メイブリに自由を与えた瞬間、チュニジアはカウンターで牙を剥く。佐野海舟・鎌田大地の中盤コンビがハンニバルの周辺を締め、彼を消し続けることが守備の要だ。
キックオフは6月21日(日)13:00(日本時間)。テレビ地上波は日本テレビ系、衛星はNHK BS、ネットはDAZNで全試合ライブ・見逃し配信あり。
👉 日本代表のユニフォームで応援する →(PR)

元サッカー部。日韓W杯2002年から全大会リアルタイム観戦、
観戦歴20年以上。国際公認スタッツ(API-Football)と
ブックメーカーオッズをもとにデータで語るW杯分析をお届けします。

コメント